1.採寸する(実測して記録する)

 実物をスケッチし、実測値を記入します。記憶は当てになりません。できるだけ詳細に記録します。四方八方から観察し、メモを残しておきます。スケッチの枚数と採寸箇所が多ければ多いほど、後で作る工作図面の精度は上がります。

 断面スケッチは多くの情報をもたらしてくれます。実物をよく観察しないと描けないので、一枚のスケッチを描くのに丸一日かかることもあります。厚みがどれくらいあるのか、隠れている部分はどうなっているのか、想像力をはたらかせて寸法を割り出します。部位の機能を正確に理解していないと、形体を把握することは困難だということがよく分かりました。

 スケッチは写真より情報量を多く取り込めます。スケッチは立体を記録できますが、写真は奥行きの判断を狂わすので要注意です。スケッチは一箇所につき、角度を変えて何枚も描きます。今回の実測部位は約1,000箇所、3,000点のスケッチを残しました。写真は5000枚をこえました。

 採寸期間は平成22年から23年の約2年間。東京都北区飛鳥山公園内に静態保存されているD51853号機をはじめ、博物館や各地に展示されている保存機を巡り歩いてスケッチを重ねました。

 各部位の構造がどうなっているのか、現物を観察してもなお分からないことがあります。また、設計当時の図面をみても理解できない箇所が出てきます。そのときは、運転操作技術及び点検業務の学習をとおして得た知識が役に立ちました。機器類の使い勝手を運転士から聞くと、各部位のはたらきや構造がとてもよく分かります。

2.実測図面を作成する

 実測スケッチに基づいて図面をおこします。蒸気機関車設計図面集など外部資料にはすべての部位の図面がそろっているわけではないので、結局は自分で設計図書を作らざるを得ません。車両本体(炭水車を含む)の平面図、立面図、断面図、詳細図、さらに、付帯する機器類についてもひとつひとつ図面を作る必要があります。

 

 D51は動輪の車軸間距離が1550mmあります。この数値の二分の一に当たる775mmを基本モジュールとして設定しました。ボイラーケーシングのパネルも台枠の長さも、あらゆる部材は基本モジュールの影響を受けることになります。

 採寸してきたデータに基づいて図面を描きます。下の図面はシリンダー後蓋周辺の実測図です。弁心棒、弁心棒案内、ピストン棒、スライドバー、モーションプレートの各位置関係を図示したものです。

3.工作図面を作成する

 実測図面が完成しても、すぐ製作にとりかかることはできません。工作用の図面を作る必要があります。

 

 使用する材料は梱包用のダンボールです。大きさはまちまちですが、余剰廃棄寸前の未使用のものが多く、加工しやすいと判断したので、 10枚から20枚、重ね張りの可能な工法を前提として設計をはじめました。ダンボール箱は輸送物の重量によって強度が異なるので、それぞれの強さに対応した部位に使い分けなければなりません。1㎡当たり500kg程度の重さに耐えられるよう、40枚を重ねて作った部材もあります。

 

 巡回展示を前提にしていますから、組立・解体に耐えられるノックダウン方式を採用することにしました。数十回の取り付け取り外しに耐えられる仕口をダンボールで作るには、それ相応の工夫を要します。組立と解体が容易に出来るコンポーネント部材をいかに丈夫に作ることができるかが、設計のテーマのひとつとなりました。

 

 A3版、B3版 合わせて500枚の工作図面を描きました。

 

 先頭部分の台枠を作るための図面です。80mm(ダンボール16枚)の厚さにダンボールを重ねたパネルを組み合わせます。台枠は5つのブロックに分割しましたが、小さい台枠でも自重は30kgぐらいあります。

接合部分の詳細図です。原寸か二分の一縮尺で描きました。 

 先頭部分の台枠に必要な段ボール箱は150個。所定のパネルのサイズに整えてから貼り合わせます。仕口は木工の仕方とほぼ同じです。

C62と1号機関車のHPもご覧ください

C 62形蒸気機関車

原寸段ボール模型を作る

http://c62-51.jimdo.com/